通りを歩いていると、景色より先に、においの変化に気づくことがあります。焼いたものを思わせるにおい、雨上がりのようなにおい。名前を正しく当てようとするより、どこで、どのくらいの間、どう感じたかを短く残してみませんか。
発生源を探し回らない
気づいた場所と、においの出ている場所は同じとは限りません。店の前で感じたからといって、その店が発生源だと断定しないようにします。確認のために敷地へ入ったり、容器や植物に顔を近づけたりする必要もありません。
不快さや刺激を感じる場合は、観察を続けるためにその場へとどまらず、離れることを優先してください。この散歩メモは、においで物質や安全性を判定する方法ではありません。体調や周囲の状況に合わせて、そもそも試さない選択もできます。
「何のにおい」より「どう感じたか」
メモには「パンのように感じた」「少し甘く感じた」など、自分の感覚だとわかる書き方を使います。「パンを焼いていた」と書くと、見ていない作業まで事実になってしまいます。感じたことと、想像した原因の間に一段置くのが、この練習の中心です。
時間と大まかな場所も添えます。同じ通りで次に感じなくても、前の記録が間違いとは限りません。ただし、二回の散歩だけで風向きや営業状況との関係を説明しようとせず、そのときの印象として扱います。
人と歩いた場合は、相手も同じように感じたとは限りません。「ここで甘く感じた」と自分の印象を伝え、相手の言葉を上書きしないようにします。違う説明が返ってきても、すぐにどちらが正しいかを決めず、二つの感覚として並べておけます。
視覚のメモと並べてみる
帰宅したら、見たものを一つ、においで気づいたことを一つ、別々の行へ書きます。同じ場面でも、二つの記録は違う範囲を切り取るはずです。写真では残しにくかった印象が、短い言葉から思い出せることもあります。
音を言葉で残す散歩と組み合わせる場合も、全部の感覚を一度に集めなくて大丈夫です。今日はにおいを一つだけ、次は音を一つだけ。そのくらいの量なら、散歩そのものを楽しむ余白も残ります。正体のわからなさを急いで埋めず、気づいた範囲を丁寧に持ち帰ってみてください。

